税務つーしん

徴収もれによって納付した源泉所得税を回収できない場合はどうなる?

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従業員に支払う給与やデザイナーなどの外注先に支払う報酬から徴収して、支払者が税務署に納付しないといけない源泉所得税。

経理事務的には手間のかかるものですが、税務調査で指摘された際に徴収もれがあると、従業員や外注先の税金でありながら支払側が肩代わりして納付しなければなりません。

そしてその肩代わりした源泉所得税を従業員や外注先から回収できればいいのですが、退職していたり疎遠になっていたりすると回収できないことがほとんどです。

この場合この肩代わりした源泉所得税はどうなるのでしょうか?

 

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源泉徴収しなければいけない人

国内において居住者に対し給与や報酬・料金の支払いをする人は源泉徴収をしなければいけません。

ただし給与については、常時2人以下の家事使用人(お手伝いさんなど)のみに対し給与の支払いをする人は、徴収しなくてもいいことが認められています。

そして、報酬・料金についても、給与について源泉徴収義務のない個人が支払う場合は、源泉徴収が不要です。

つまり、給与を支払う従業員(お手伝いさんなどの家事使用人を除く)がいない個人事業者は、報酬・料金について源泉徴収をする必要がありません(バー等の経営者がホステスに報酬を支払う場合を除きます)。

 

源泉徴収しないといけないもの

源泉徴収しないといけないものは次のとおりです。

  • 利子、配当など
  • 給与、賞与など
  • 退職給与など
  • 報酬・料金など

最後の報酬・料金は多岐にわたるため、今回は詳しい説明は省略しますが、主なものは士業に対する報酬(行政書士への報酬を除く)、原稿料、デザインの報酬、プロスポーツ選手の報酬、芸能人の出演料やホステスの報酬などです。

 

肩代わりした源泉所得税を相手から回収しない場合

今回問題となるのは、源泉徴収しなければいけなかったのに源泉徴収せずに全額支払った場合で、後日、税務調査で指摘されたため、徴収すべき源泉所得税を納付し、その源泉所得税相当額を相手先から回収しないといけないのに回収できなかったケースです。

給与の場合

徴収もれの対象となる従業員が勤めていればいいですが、退職してしまった場合など連絡が取れないと回収することは難しいですね。

例えば、総支給額が200,000円/月で扶養人数0人の元従業員について、本来なら4,770円の源泉所得税を徴収して手取り額195,230円を支給するところ、200,000円そのまま渡してしまったとします(わかりやすくするために社会保険料は省略しています)。

課税支給額 甲 欄 乙欄
 扶養親族の数  
 以上  未満 0人 1人 2人
  88,000円 0円 0円 0円 ×3.063%
199,000円 201,000円 4,770円 3,140円 1,530円 20,900円
201,000円 203,000円 4,840円 3,220円 1,600円 21,500円

この4,770円は退職してしまったのでもう回収できない。

となると、その請求をしないと決めたときに、4,770円をその退職した従業員に支給したと考えます。

そして、この4,770円も源泉徴収の対象になります。

所得税基本通達221-1には、この納付した4,770円を税引手取り額として、さらに源泉所得税を計算することとされています。

退職した従業員ですので源泉徴収税額表は乙欄を使います。

すると支払総額は【4,770円÷(1-0.03063)=4,920円】となり、

源泉所得税は【4,920円×3.063%=150円】となります。

まとめますと、本来給与から徴収すべきであった源泉所得税4770円と、その源泉所得税を元従業員から回収せず給与の追加払いとしたしたことによる源泉所得税150円を給与支払者が納付することになります。

 

デザイナーに対する外注費の場合

次は外部のデザイナーにデザインの外注をした場合に支払うデザイン料から、源泉所得税を源泉徴収していなかった場合です。

「デザイナーからの請求書に源泉所得税の徴収額が記載されていなかったために、源泉所得税の徴収もれが発生した」ということもありますが、本来は請求書に記載されているかいないかに関わらず、支払者の方で源泉徴収が必要かどうかを判断しなければいけません。

源泉徴収に詳しくない方にこの判断をしてもらうのは酷ですが。。

例えば、消費税抜で200,000円のデザイン料を外部のデザイナーに支払ったとしましょう。

この場合、徴収すべき源泉所得税は【200,000円×10.21%=20,420円】です。

この20,420円はデザイナーから回収しないといけませんが、もう取引をしていなかったりすると回収することは難しいですよね。

この場合は、20,420円を報酬としてデザイナーに追加払いしたすることができます。

ただし、これも給与と同様に源泉徴収の対象になりますので、源泉所得税を引いたあとの金額が20,420円と考えます。

そうすると支払総額は【20,420円÷(1-0.1021)=22,741円】となり、

源泉所得税は【22,741円×10.21%=2,321円】となります。

まとめますと、本来デザイン料から徴収すべきであった源泉所得税20,420円と、その源泉所得税をデザイナーから回収せずにデザイン料の追加払いとしたことによる源泉所得税2,321円を支払者が納付することになります。

 

相手方への通知は必要?

追加払いとした給与や報酬は、相手にとっても所得になるため、通知しないといけないのではという疑問がありますよね?

ただ、通知ができるくらいなら追加払いとせず相手に請求すればいいのですから、現実的には通知はしないことが多いようです。

 

まとめ

  • 徴収もれの源泉所得税は給与や報酬の支払者が納付しなければならない
  • 回収できない源泉所得税は、給与や報酬の追加払いとすることができる
  • 追加払いとなった給与や報酬からも源泉所得税を徴収しなければいけない

 

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