税務調査では、その外注費は給与じゃないんですか?という指摘を受けることがよくあります。
外注費も給与も人が提供したサービスに対する支払いですが、両者の違いは何でしょうか?
事業主としては外注費にしたく、国税からしたら給与にしたいので、いつもせめぎ合いがあるのですが、この外注費と給与は何が違うのか説明していきます。
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外注費にしたい理由・給与にしたい理由とは?
外注費にしたい理由
- 外注費にすると消費税の課税対象になるので消費税の納税額が少なくなる
- 雇用関係がないので社会保険に加入させなくてよい(社会保険料の負担がない)
事業主側からすると外注費にしたい理由は、ほぼこの2つです。
年間540万円を支払う場合、給与だと消費税の課税対象ではないので、納める消費税額は減りませんが、外注費だと40万円も消費税の納税額が減ります(税率8%の場合)。
社会保険料だと業種にもよりますが、おおむね支払総額の18%だとすると540万円×18%=97.2万円も違ってきます。
給与にしたい理由
国税からすると、消費税は支払者から取れない分は役務の提供者(外注の事業者)から取ればいいのですが、そのような外注の事業者は消費税を納める義務がない人が多いので、消費税を取ることはできません。
また、外注費で源泉徴収の義務がない場合は源泉所得税を徴収することはできませんが、給与なら源泉徴収で前もって所得税を徴収できますので、その外注の事業者が納税をしなくても取りっぱぐれることがありません。
外注費とするためのポイント
ではその支払を外注費とするためにはどうすればいいのでしょうか?
消費税法基本通達には次のようにあります。
消費税法基本通達1-1-1 個人事業者と給与所得者の区分
事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
- その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
- 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
- まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
- 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
雇用契約に基づいているか、請負契約に基づいているかどうかが判断のポイントになりますが、契約書を準備して形式的に請負契約としても外注費にはなりません。
実態がどうかということが問われるのですが、その実態の判断材料となるのが、箇条書された4つの項目です。
役務の提供の内容が他人の代替を容れるか
要するに代わりがきくのであれば外注費となり、代わりがきかなければ給与となります。
事業者の指揮監督を受けるか
指揮監督を受ければ給与となり、受けなければ外注費となります。
まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等に既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるか
雇用契約は役務の完了を要件としていないので、完成していなくても報酬を請求できますが、請負契約は役務の完了が要件とされますので、未完成では報酬を請求できません。
したがって、役務の提供が未完了でも報酬をもらえれば給与、もらえなければ外注費となります。
役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているか
支払者から材料等の支給や用具の提供を受ければ給与、役務の提供者が自分で材料や用具を用意すれば外注費となります。
役務の提供者はどちらがいいのか
支払を受ける役務の提供者の立場からするとどちらがよいのでしょうか?
ポイントをまとめてみました。
- 実額経費が多い場合は外注の方が有利なケースもある
- 外注費の場合、消費税の納税義務者になると実質的には支払者が納付すべきだった消費税を支払うことになる
- 外注費の場合、事業税がかかるケースがある
- 厚生年金ではなく国民年金になるので、将来もらえる年金が少なくなる
経費が少ない場合は、不利になるケースが多いような気がします。
税務調査で外注費ではなく給与とされた場合
税務調査で外注費としていたものが給与とされた場合、次のような影響が考えられます。
- 消費税の追徴税額が発生する(追徴された消費税は法人税・所得税で経費になりますので法人税は減少します)
- 過少申告加算税、延滞税が課せられる(法人税・所得税で経費になりません)
- 源泉所得税の不徴収による追徴がある
上記の中では源泉所得税については要注意です。
この源泉所得税は役務の提供者から徴収すべきものなのですが、税務調査の際に指摘されると、事業者が先に国税に納付しなければなりません。
その後、事業者が役務の提供者から源泉所得税を徴収し、その役務の提供者が修正申告または更正の請求をすることになります。
もし役務の提供者がすでに退職していて連絡が取れない場合、取りっぱぐれる可能性もあります。
まとめ
外注費か給与かの線引は、契約書をまいて形式的だけ整えてもダメです。
実態がどうかによって外注費となるか給与となるかが決まりますので、安易に判断をしないようにしましょう。