賃貸用不動産を会社が借りて役員や従業員に貸し付ける、いわゆる借上社宅を利用すれば、社宅家賃を会社の経費にすることができます。
この取扱いは従業員と役員では、最低限徴収すべき家賃の計算が違いますので、それぞれについて確認しておきましょう。
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従業員の場合
従業員に社宅を貸し付けた場合。最低次の月額賃貸料相当額の50%以上の家賃を徴収しなければなりません。
もし50%未満の家賃しか徴収していないと、次の金額の50%相当額と実際に徴収した家賃との差額が給与となり、従業員に対して所得税・住民税が課税されます。
【月額賃貸料相当額の計算】
{家屋の固定資産税課税標準額×0.2%+12円×家屋の床面積(㎡)/3.3㎡}+{敷地の固定資産税課税標準額×0.22%}
この賃貸料相当額は、実際の家賃よりも低くなるように設定されていますので、実際に従業員から徴収する家賃はわずかです。
私の自宅を例に計算してみますと、
【月額賃貸料相当額の計算】
家屋の課税標準額9,292,000円 土地の課税標準額620,338円 家屋の床面積77.25㎡(共有部分込)
9,292,000円×0.2%+12円×77.25㎡/3.3㎡+620,338円×0.22%≒20,230円
20,230円×50%=10,115円/月以上の家賃を徴収すれば給与課税されません。
私の家は専有面積が67㎡の3LDKで、家賃相場からしたら少なくとも月10万円はするので、毎月約1万円の家賃で住めるなら嬉しいですね。
もし、会社が月額家賃の50%を現金で渡した場合、従業員からすると60万円(10万円×50%×12ヶ月)が給与に加算されますが、借上社宅の場合は給与課税はされず、仮にまったく徴収しなかったとしても12万円(1万円×12ヶ月)しか給与に加算されません。
役員の場合
役員の場合は、従業員よりも条件が細かく又厳しくなります。
小規模住宅の場合
小規模住宅とは、床面積が木造家屋の場合132㎡以下、木造家屋以外の場合99㎡以下の住宅をいいます。
小規模住宅の場合は、従業員の場合のときに計算した月額賃貸料相当額以上の家賃を徴収しなければなりません。
【月額賃貸料相当額の計算】
{家屋の固定資産税課税標準額×0.2%+12円×家屋の床面積(㎡)/3.3㎡}+{敷地の固定資産税課税標準額×0.22%}
注意すべき点は月額賃貸料相当額の50%以上ではないところです。
私の家を例に計算すると20,230円になります。
参考
自己所有の場合であっても同様の計算式で計算します。
小規模住宅以外の場合
次の金額のうちいずれか大きい金額以上の家賃を徴収しなければなりません。
【月額賃貸料相当額の計算】
1.{家屋の固定資産税課税標準額×12%(木造以外の場合10%)+ 敷地の固定資産税課税標準額×6%}×1/12
2.支払賃料の50%相当額
私の自宅を例に計算してみますと、
【月額賃貸料相当額の計算】
家屋の課税標準額9,292,000円 土地の課税標準額620,338円 家賃相場10万円/月
1.(9,292,000円×10%+620,338円×6%)×1/12≒80,535円
2.100,000円×50%=50,000円
3.1>2 ∴80,535円
私の家は小規模住宅に該当しますが、仮に小規模住宅以外に該当するとすれば、通常の家賃とそう変わらなくなります。
参考
小規模住宅以外の住宅で自己所有の社宅の場合は、1の計算式のみで月額賃貸料相当額を計算します。
豪華社宅の場合
床面積が240㎡を超えるものについては、その住宅の取得価額、支払賃料、内外装等の状況から判断して豪華社宅と認定されれば、一般的な賃貸料を徴収しなければなりません。
また、240㎡以下でもプールがあったり、役員の個人的な嗜好が反映された設備があると豪華社宅と判定されます。
豪華社宅となると社宅を利用した節税効果はほとんどないことになります。
節税のポイント
節税するためのポイントは次のとおりです。
会社名義で賃貸借契約する
会社名義で賃貸借契約しなければ借上社宅となりません。
個人契約の場合、法人契約にまき直す必要があります。
従業員と代表者以外の役員の場合
会社負担相当額(支払家賃ー徴収した家賃)を給与収入から減額して支給すれば、会社の税金は安くなりませんが、従業員や役員の所得税・住民税の負担が減ります。
ただし、従業員や役員の給与収入が減ってしまうので、もし住宅ローンを組もうと思ったときに、収入が低いことにより住宅ローンの審査に通らない可能性がございますので、給与の低い方については注意が必要です。
逆に給与収入から減額しない場合には、会社の税金は安くなりますが、家賃分のキャッシュは出ていくことになります。
なので、純粋な節税というよりは福利厚生制度の一環として、従業員のモチベーションを上げたり、人材採用の際のアピールポイントとして活用してはどうでしょうか。
代表者役員の場合
代表者役員、特にオーナー社長の場合は、今まで会社の経費にならなかった自宅の家賃の一部が会社の経費になります。
オーナー社長の自宅の家賃の支払いが、社長の財布から出ていくか会社から出ていくかの違いだけで、前者は会社も社長個人の税金も減ることはありませんが、後者なら会社の経費になり会社の税金は少なくなります。
また、会社の家賃負担額をオーナー社長の給与収入から減額して、社長個人の所得税と住民税を節税することも可能です。
固定資産税の課税標準額を調べるには?
社宅の家賃を算定するのに必要な固定資産税の課税標準額を知ることは、自己所有の社宅であれば簡単ですが、他人所有の社宅では貸主に教えてもらう必要があります。
貸主に教えてもらえない場合は、賃貸借契約書を市区町村の固定資産税課に持っていけば閲覧が可能ですので、そこで入手しましょう。
まとめ
借上社宅を使った節税は、オーナー社長の場合は純粋に節税対策になります。
一方、従業員や代表者家族以外の役員の場合、節税というよりは福利厚生の手段として考えてはいかがでしょうか。